住職の一存で後任住職を決められません

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    住職が、弟子や子弟に対し、「あなたを次期後任住職とする。」と常日頃から言っていたところ、ふとしたことから仲違いして、住職が別の人を後任住職に任命したり、或いは後任住職交代手続を取らずに住職が亡くなったような場合、その寺院は、住職の後継者紛争を抱えることになりかねません。
 住職が、弟子や子弟に対して次期後任住職にすると言った約束は、法的に有効なのでしょうか。この点について判断した裁判例として、東京高裁昭和62年7月30日判決(判例時報1252号51ページ)があります。同判決は、「住職、責任役員、干与者の任免、人事権に関する事項は、もっぱら宗制及び宗教法人の規則、規程によって律せられるべきものであって、関係者間の私的契約によって左右することを得ないものであり、住職と後任住職との間にこれに関する合意がなされても、契約上の義務としてその履行を強制し得るものではないと解される。」と判示しています。すなわち、次期後任住職の選任は、寺院規則にしたがって、しかるべき機関決定(責任役員会決議・総代の同意等)を経て行われるものであり、住職の一存では決められません。
 寺院も宗教法人であり、株式会社が会社法と定款にしたがって運営されるように、宗教法人法と寺院規則によって運用されなければなりません。住職の一存で物事を決めると、思わぬ紛争の火種となりかねません。貴寺では、住職の独断で物事が進められていないか、振り返ってみましょう。

 

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